2007年01月12日

情けは人の・・・

「反日宣伝ビラ」事件で捕まえたイチムという男の白状から、半年かかって事件は落着する。

そのイチムだが、自供してすぐ留置場から出して、自分たち憲兵の宿舎の一部屋に軟禁したという。あるとき、
「一度、奥さんに会わせに帰宅させてやりたいが、必ず戻ってくるか」
と聞くと「戻る」というので帰宅させてやった。
ところが、翌朝になっても帰って来ないから、上官の許可もなしに独断で許可した藤原曹長も心配したはずだ。
そこへ、分隊長の片山清一大尉から呼び出され、
「お前変なことをしたな」
「いや、情報収集にやらせたんです」
「大ばか者、そういうことは俺に連絡してからやれ。イチムは他の憲兵隊につかまったんだ。本人も迷惑なら、こっちも迷惑だ。すぐもらい下げの手続きをせい」
まさかほかの憲兵隊(マニラに3つの憲兵分隊があった)につかまるとは夢にも思わなかったから、藤原曹長は閉口して、もらい下げに・・・。
部下を処罰せずに、ことをうまくおさめた片山大尉もえらい上官といえる。

で、ドラマはこれからだが、ここは本の中の藤原曹長の言葉をそのまま引用したい。
「敗戦後、米軍の収容所に入れられたとき、われわれ憲兵はシラミつぶしに摘発され、片っぱしから軍事裁判にかけられたものです。まあ、わたしなんかの下っ端は裁判まではゆきませんでしたが、片山さんはやられた。ところが、ちょうどその裁判の陪審員がこのラモン・イムチで、顔を見るなり、
『裁判長、この人は...』
と当時のことを説明してくれたので、片山さんは無罪釈放されたのでした。憲兵の中にもそういう人がいた、とわかってもらえればありがたいわけです・・・」

ひとつのエピソードだが、歴史の表面には決して出ることのない無数のドラマを当事者だけがもっているのだなと改めて思ったりする。
posted by shuuin at 17:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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