2007年07月28日

長い文章、短い文章

「元来、陸軍戦時所要の銃砲、弾薬、器具、器材、被服、糧秣等、各種軍需品整備の情況はその整備担任の部局を異にしていたため、ややもすれば跛行的となり、不経済施設や不適当な貯蔵があり、経済軍備建設の本旨には合せぬ欠陥があったのにかんがみ、さきに作戦資材整備会議という臨時機関を設置して調査是正をおこなったのであったが、将来、整備するものについてもその必要度と所要の資源や工程等を基礎として、事前の按排を適切にすることも必要であるので、この業務処理に任ずるため、前述の会議を廃して常設機関としたのがこの整備局である。」


いきなり引用をしましたが、目にされた方はあるいは驚かれたかもしれません。実はこの文章、これで一文なんですね。

それで、書物の中でこれを読んでいるときにはそれに気づきませんでした。
それどころか、すらすらとその内容が伝わって、理路整然とした過不足のない説明に感心していました。あらためて見直したら、それが一文だったのですね。一息にこれだけの中身を、もれなくダブルことなく書けるということは、やはりかなりの明晰さが必要でしょう。

ところで、いま売れている本でも、ブログでも長い文章はタブーではないでしょうか?
若い人に特にこの傾向が強いようですが、さまざまな理由が考えられますけど、メールとかコミックとかの影響もあるかも?などと想像しています。
脳の働きが短くなっているから、長文だと途中までいって最初のほうを忘れるからこんがらかって投げ出すんだ、という説がありますけどどうなんでしょう。

たしかに国語力の問題が絡んできますね。漢字の力を自在にもちいるから、視覚的にすっと意味がわかるということがあります。ぜんぶひらがなにしたら、よみにくいことかぎりなしになってしまいそうですからね。
説明すると長くなる内容を、二字か三字の熟語で表してしまえる利点もあります。熟語というのは、いまのカタカナの短縮語?みたいな便利な役割をしているのではないですか。

昭和前期の小学生の国語力は、現在とまったく比較にならないほどすごかったはずですね。そのことについてはまた、別の機会にふれるとして、一般に長文で書くことの利点は、文末の言葉が一つで済む。
これにひきかえ短文の場合は、「ですます」調で書いてると、「です。」をやたらに繰り返さないといけない。「である。」にしても同じです。語尾の反復がなんとも気になります。少しずつ言い方変えたり、体言止めにしてみたりして・・・・・・・
それと、接続詞も増えてしまうでしょうしね。
短文と長文と、どちらを選ぶかはやはり難しいですね。

ところで、はじめの引用文ですが、この文章の前には次の一文がはいります。
 「整備局というのはまだ成立間もない局であった。・・・・・」

これは陸軍省整備局の成立の経緯を、後世の人にわかりやすく説明したものだったのですね。筆者はあの小磯國昭で、その回想録「葛山鴻爪」のなかで、整備局長になったときのことのを、述べるときの一文でした。別に名文でもなんでもない普通の文章ですが、形容詞などひとつも使わず一気にこれだけの要約をさらりとメモした例は、もしかしたら珍しいかもしれません。

小磯については、終戦まぎわに東條英機の後継に指名された8ヶ月間の評価が、後世に伝わるすべてのようです。

ところでこの回想録は、戦後に小磯が戦犯として巣鴨に拘置されていたときに、獄中で書きとめられたものでした。
かれらは何かを書き残すことを許されなかったとかで、これらは配られた裁判の経過報告書か何かの紙の裏に、ちびた鉛筆で書き残されたものだったのです。

そのことを考え合わせると、辞書も参考資料もなく、己の記憶だけで後世に資料を残そうとした六十半ばの小磯國昭の文章力に、端倪すべからざるものを感じてしまいました。

「合せぬ(合致しない、あわない)」などという文語的な表現も、あの頃の日本人にはすっと通じたのですね。
前半のくだり、現代の役所の欠陥にそっくり当てはまるので、思わず苦笑しました。

小磯は戦後、生まれ故郷山形の村のひとつで、村長として暮らすつもりだったようですね。ところが、A級戦犯に指名されて呼び出されて巣鴨プリズンに収容、いわゆる東京裁判で無期禁固になりそこで病を得て獄死します。

ふと思ったのは、すでに長く予備役にあった老将軍が、あそこで首班に駆り出されなかったとしたら、当然A級は免れたでしょうね。

実はあのとき首班第1候補は、南方総軍の寺内寿一大将でしたが、戦況すでに末期状態。総軍司令官を呼び戻すわけにはゆかず、二番手の小磯にお鉢がまわったわけでした。
ところでその寺内は、マニラの刑務所で戦犯裁判の前に病死しました。

小磯大将を首班に押したのが、元老平沼騏一郎でした。いまの平沼赳夫衆議院議員の義理の父親、ってこれ関係ないか?









posted by shuuin at 15:58| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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